さばぺんタイムス

音楽と、本のレビューを中心に、その他もろもろを取り扱いたいです。

さばぺんタイムス

教育委員会は本当に「大ウソつき」なのか?川口いじめ自殺問題から

www3.nhk.or.jp

www.yomiuri.co.jp

bunshun.jp

このニュース、メディアによって報道内容がバラバラなんですよ。ちゃんと読み込まないと、いや読み込んだとしても、事件の全容は見えづらいんですね。

 

この事件を、タイトルだけ見て教育委員会が何もしなかったから自殺したんだ!」と捉えてしまうのはかなり危ないと思います。

 

とにかくこの事件は、極めて複雑で、デリケートな可能性が特大です。理由を数点。

 

 

1つ目。文春の話が本当なら、1回目の自殺未遂の時点で学校から上にあげないといけない危険なケースだと思われるのですが、学校の動きが見えてこないこと。

 

「いじめ」の訴えが再三あったうえでの自殺未遂ですから、本当にあったかどうかはともかくとして確実な対策が必要。これは担任だけでなく学年主任も生徒指導も、学校全体として取り組むべきケースです。ただ、具体的にどのように対策が取られていたかは、この報道からは分かりませんし、たぶん今後も後述する理由によって伏せられると思います。

 

 

2つ目。教育委員会がなぜか悪者になっているということ。この手の問題は教育委員会はあまり介入できません。こういうことがあると、教育委員会はなぜかいつも矢面に立たされますし、責任ある立場っぽく報道されますが、ケースバイケースです。これも後述する理由によって、どちらかと言えば役所、加えて警察の生活安全課が担当すべきケースと思います。

 

 

3つ目。これがかなり核心なのですが、自殺した生徒の認知能力です。読売新聞の報道では、生徒は特別支援学校の高等科に進学していたとされています。

 

特別支援学校に進学していることや、公開されたノートや手紙の文字、漢字の使い方を見ても、かなり、かなり支援を要する生徒ではないかなと感じます。進学後の9月に自殺したという点も含めて。少なくとも、中3程度の学習が可能だったとは考えづらいんです。近年、特別支援学校への進学には療育手帳が必要だとされるようになっているので、少なくとも手帳は持っているはずです。

 

特別支援学校へ進学しているということから、恐らく中学でも特別支援学級に在籍していたものと考えられますが、実際どうだったかは報道からは分かりません。しかし、そうであろうとなかろうと、こういった生徒については相当マメなケア、情報共有がなされているはずです。小学校からの引継ぎなどもあったのではないでしょうか。

 

こういったケアがされていなかったのであれば、学校には大いに責任があると思いますが、恐らく「対応はしていた」程度にぼかされて終わる可能性が高いです。ケアを行っていたとしても、それを具体的に公開することは生徒や保護者のプライバシー侵害につながり得るからです。

 

ちなみにこういった生徒の場合、保護者との意見交換も頻繁に、かつ綿密に行われているはずです。部活はサッカー部で本当にいいのか、とか、現在こういった学習をしていてこういった点が問題だ、とか、本当に特別支援学校への進級で構わないか、ということなど。

 

とくに進路については、学校からは最大限保護者へ情報提供を行いますし、保護者も相応に考えて決断をされていると思います。なぜなら、こういった生徒は高等学校に進学した場合、学習についていけず退学するという可能性がかなり高いからです。しかしながら、特別支援学校へ進学した場合、本人次第ではありますが先の進路はある程度限定される可能性が高いので、そういったことをよく考える必要があります。

 

で、そういった生徒については行政の支援(たしか、生涯学習課)も入ります。手帳の取得の際にも行政が携わります。前述した、役所が担当すべきケースだよ、というのはそういうことです。そういった方が自殺未遂をされているのですから、警察の生安とも何らかの情報交換が行われているでしょうし、警察も「あらゆる可能性」を想定して動いていると考えられるのですが、そこは報道からは分かりません。

 

そういった生徒の状況について、メディアによっては記載されていないため、問題をミスリードしてしまってます。デリケートだとは思いますが、事件の全容を知る上ではかなり重要な情報ではないでしょうか。

 

 

不可解なのは、NHKの報道で言及されていますが、

本人への聞き取りを要望していたが、話せる状況にないということで実現していませんでした。

教育委員会が話している点です。「話せる状況にない」というのは、恐らく生徒側から出たのだと思いますが、それなのに「教育委員会は大ウソつき」となっているのがよく分かりません。ここに話の飛躍を感じます。

 

 

それから、繰り返しになりますが、進学後の9月になって自殺しているということ。文春では、

9月になり、学校が始まったことや、近くに加害者の家があることなどで、精神的に不安定になっていた。 

とありますが、ここの引継ぎがどうなっていたのか、それから保護者が子供に対してどのようなケアをしていたのか、ということが分かりませんし、いったい進学から半年でまわりの大人たちは何をしていたのか、果たしてこの子のことを本当に理解していたのか、と思わざるを得ません。「味方」と言われている家族も含めて。ちゃんとした関わりがあれば、いじめの原因から離れて半年も経って自殺、なんてことにはならないはずなんです。

 

 

私は、この事件は、しっかり掘り下げて報道されるべきではないかと思います。今回の事件を、単なる「1人の生徒が教育委員会を批判して自殺した事件」として終わらせるべきではありません。

 

保護者の方、真相究明を望まれているようですが、ぜひ「あなた方は何をしたのか」も、徹底的に話してほしい。あくまで推測のうえですが、この子は行政側の関わりだけでは絶対に不十分です。デリケートな問題であるのは重々承知の上ですが、教育に大いに疑念を抱かれているからこそ、「あなた方は何をしたのか」を語るべきです。「やるべきことをやったと、胸を張って息子にいえるでしょうか。」

 

そうでなければ、「学校教育の『実態』」は見えてきません。よく学校は批判のやり玉にあげられ、よく分からない理屈で叩かれることが多いのですが、そもそも学校が生徒に100%の責任を負うことはできないのです。それでも、教員は「どうすればこの子を助けてあげられるだろう」を、必死に考えて、細い細い解決の糸口を探し出しています。特別支援教育ともなれば、保護者の理解など、相当にデリケートな問題にも関わってきます。

 

もちろん、そうでない教員も残念ながらたくさんいます。それも事実。だからこそ、「真相究明」がなされるべきです。

 

 

いったい何が起こっていたのか。そして、どうすべきだったのか。とても難しい問題です。この記事すら、直接的には書けません。ですが、この悲しい事件をせめて教訓にするために、そういった議論が行われることを切に望みます。