さばぺんタイムス

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「『イスラムvs.西欧』の近代」読みました。イスラムの目から世界を見よ!イチオシ。

 

「イスラムvs.西欧」の近代 (講談社現代新書)

「イスラムvs.西欧」の近代 (講談社現代新書)

 

 

先に断言しますが、この本イチオシです。世の中を理解するための導入として、欠かせない知識が詰まっていると思います!

 

 

イスラム教」と聞くと、ちょっと前ならビンラディン、最近ではイスラム国」のイメージが強いのではないでしょうか。あと、石油とか。中学で勉強したことを覚えていれば、「めっちゃお祈りしてる人たち」とか、「豚肉食べない人たち」というイメージもくっついていると思います。

 

ビンラディン」や「イスラム国」ときて連想されるのが「テロ」。本書は、なんでイスラム教の人たちが「テロ」みたいなことをやりだしたのか、ということを歴史から読み解こうとしています。

 

で、結論をチョーざっくり言ってしまうと、「ヨーロッパ人がチョーヤバい奴らに見えたから」ということになります。この「見えた」というのは、ビンラディン自身がそう見たわけではなくて、彼の師匠の師匠の師匠の師匠の師匠ぐらいの人が「ヤバい!!」と感じていた、ということです。それが、時代の流れに乗って、ビンラディンとかイスラム国にたどりついたわけ。

 

 

何がヤバかったか。一つは、彼らヨーロッパ人がいったい何者なのか分からなかった、ということです。この時代のイスラム教徒にとって、世の中の人々は「イスラム教信者」か「キリスト教信者」か「ユダヤ教信者」の3種類に分かれていて、それ以外の人間というのは存在しない、ありえない、という感覚でした。

 

ところが、イスラム世界のひとつ・エジプトを突如攻めてきたナポレオン・ボナパルトという人間は、「おれキリスト教のボスやっつけてきたぜ!!おれらフランス人もある意味イスラム教徒だから仲よくしよう!!でもお前らのリーダーは偽者だからやっつけるね!!」と言ってきたわけです。

 

でも、元々のイスラム教徒たちにとって、彼らの振る舞いはとてもイスラム的ではない。その上、キリスト教のボスをやっつけてきてる。ユダヤでもなさそう。じゃあ、こいつらは何者だ?となります。

 

以前の十字軍とは全く異質の存在。アッラーを前提として生きてきた当時のイスラム教徒たちには、突如として現れた「何者でもない侵略者」が恐怖の対象となったわけですね。彼らは、自分たちの宗教を広げるために戦うのではなく、金や権力のために戦いをしかけてくる。イスラムの常識では考えられません。そりゃもう恐ろしかったんじゃないでしょうか。

 

 

二つ目。ナポレオンの後、時間をかけてよく見てみると、「何者でもない侵略者」たちの根っこにはキリスト教があったことです。でも、口では「いや、おれらは政治と宗教は分けてるんだよね」と言っている。ライシテ。ますます訳が分かりません。

 

つまるところ、なんだかもう全部ごっちゃごちゃな奴らが攻めてくる。綺麗に混ざってればまだよかったのでしょうが、極めて見栄えの悪い混ざり方をしているように見えたんでしょうね。

 

 

三つ目が、その根っこにあるキリスト教の性質です。キリスト教は、イエスを救世主として崇拝していますが、イスラム教ではイエスはあくまでアッラーの手下みたいなもの。イエスを信じちゃダメなんです。

 

エスはあくまでアッラーの教えを伝えにきただけ。だから、イエスじゃなくてアッラーを信じないとダメ。めんどいね。

 

 

で、四つ目が、そんなヨーロッパ人がめっぽう強かったという事実。ナポレオン時代はエジプトがコテンパンにされましたし、第一次世界大戦ではオスマンもやっつけられてしまいました。

 

 

ということで、ぱっと見は謎、でも根っこにキリスト教で思想はごちゃ混ぜ、そんなやつらが強い、これはヤバい!!となったわけです。こんなワケ分からんやつらにイスラムが、あるいは「アッラーへの信仰」が潰されるわけにはいきません。

 

じゃあどうしようか?ということで、イスラム世界ではたくさんの議論が巻き起こります。その中の一つの思想が、時代を経てビンラディンイスラム国にたどり着く、というわけです。

 

 

さて、この本なんですが、本当に面白いなと思いました。日本から見たイスラム世界というのはどうしてもアメリカの色眼鏡というか、バイアスがかかってしまいがちなんですが、彼らの常識を通して世界を見てみると、また全然ちがう景色が見えてきます。

 

そこにあるのは、欧米への疑問であり、今の世の中への疑問です。イスラムの理解ができるだけでなく、「国家」ってなんなんだろう?「宗教」ってなんなんだろう?ということを考えさせてくれる、とても読みがいのある本でした。

 

 

最後に、本を読んだうえでのギモンがいくつか。

まず、「スルタン」って何者だ?ということ。イスラムの理屈と合わないんですよね。

次に、イスラムの教義って「いま」どうなってんの?どこまで本気なの?ということ。

あと、ぼちぼち中国ロシアとガチンコでぶつかるのは目に見えてるんだけど、そん時はどーすんだろ?ということ。

 

他にも諸々。詳しい人教えてください。あとは、また他の本を読んでみることにします。

 

ァディオ───(`・ω・´)ノ───ス